またたび感想録

観たもの聴いたもの読んだものの感想を述べます。

2023-01-01から1年間の記事一覧

『君たちはどう生きるか』(映画)

宮崎駿の遺言状みたいな作品だなと。 これが本当に最後なのかもなあと思わせるような、何かバトンを渡されたような気持ちになる作品だった。「次は君たちだ」とでもいうような。 以下、とりとめのない所感。 バトンでもないのか。 老爺が長い時間と人生のす…

『推しの子』(アニメ)

平日の昼間からクーラーの入った部屋で『推しの子』観てました。なんと贅沢。 ◯アイドルのアニメ アイドルってそもそも直訳すると偶像なんだけど、生身の人間が「演じて」作り上げているシステムだと思っていて。 それがアイドルアニメなんていう偶像をさら…

鴨志田一『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』

電撃文庫久しぶりに読んだ。 『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』、有名タイトルで認知はしてたけど、おすすめされたので読んでみた。 ◯主人公の複雑なキャラクター造形 梓川咲太は元々の気質と、妹と思春期症候群に巻き込まれたあとに変質した…

西脇だっと『Fate/stay night』

ブログを遡ったら1年ぶりのFateでした。 セイバールートを全20巻で漫画化した作品。 ◯自己犠牲型主人公の本懐がここに 我が身を省みず敵に突っ込んでいく主人公が、仲間に諭されて自己犠牲をやめる…という展開はわりとよく見かけるんだけど、衛宮士郎は新し…

一箱古本市のお店構想

友だちに数年前から一箱古本市の勧めを受けてて、なんの本を並べたらいいんだろうな…と思ってたけど、今日今さっき突然わりといい構想が浮かんだ。 ・店名を「実存」もしくは「jitsu→zon」にする ・置く本はカフカの変身とカミュの異邦人の文庫本のみ 6冊ず…

廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』1巻

このシリーズが図書館で静かにブームになっていることはなんとなく知っていたんだけど、学校勤めの友だちにおもしろいよと勧められたので1冊読んでみることにした。 おもしろかった。 ドラえもんのひみつ道具みたいに何が起こるか分からないふしぎな駄菓子と…

女王蜂『十二次元』再度

さて随分時間を置いて再聴。 普段あまり好きなバンドのトークとかインタビューとか見ないんだけど、0年0組観てたらアヴちゃんの徹底的に偶像を作り上げるスタンスが見えたので、どこか不安を伴って聞いていた女王蜂の最新アルバムも聴こえ方が変わった。こう…

菅野仁『友だち幻想』

ちくまプリマー新書より。 中高生向けらしくさらっと読ませるけど、人間関係というシステムをうまく整理していておもしろかった。以下概要と所感。 ・「脅威」でもあり「生の味わいの源泉」でもある他者 他者には、何をされるか分からないあるいは不意に傷つ…

劇場版PSYCHO-PASS PROVIDENCE

PSYCHO-PASS10周年の記念作品ということで。 槙島と朱ちゃんが対峙したまま年を越したあの冬はもう10年前なんですね。 PSYCHO-PASS 2とPSYCHO-PASS 3の間のできごとが語られる構成となっている。 ◯なんといっても常森朱 この作品の最大の魅力かつ見どころと…

0年0組アヴちゃんの教室

というアイドルオーディション番組を一気観した。 ステージの鬼才アヴちゃんの思想や技術をアヴちゃん手ずから若い子たちに教えるという神企画…見るしかないやつ。 アヴちゃんは「伝える」の鬼才なので、観るだけでほんとうに色々考えさせられる番組だった。…

UNISON SQUARE GARDEN 『Ninth Peel』2週目

今週もずっと聴いてた。 「一聴では分からない」とはユニゾンが自分たちの曲によく使う形容で、毎日聴いてるから今20聴目くらいなので、もう1回感想を述べてみることにする。 01.スペースシャトル・ララバイ 「ララバイ」って子守唄の意だったような気がする…

ブルーロック(アニメ)

全24話視聴完了。 サッカーへの興味皆無人間ですが、はじめてサッカーアニメを完走しました。 ・エゴイスト 自分自身と向き合い、信じて、突破口を見出す才能の原石たちが描かれる。 清々しいまでに己のエゴを磨き続ける24話の中で、それぞれのキャラクター…

UNISON SQUARE GARDEN 『Ninth Peel』

待ち焦がれたユニゾンの新作アルバムが発売されました。今回も最高のアルバムです。 01.スペースシャトル・ララバイ 「忘れたくても忘れない 今を繋いでいく 僕たちのスピードで」 冒頭フレーズがまぶしい。『ノンフィクションコンパス』がパワーアップして…

『シン・仮面ライダー』

待ってましたの『シン』特撮シリーズ。 庵野秀明はオタクとコミュ障を描写するのが最高に上手いということと、ウルトラマンはリア充の集まりだったことが分かった。 仮面ライダーは小学生の頃クウガを観たきりだったと思う。 シン・ゴジラは、壮絶な災害に人…

『ロストケア』

「安全地帯にいるあなたに何が分かるんですか」 「人間は見たいものだけ見る、見たくないものは見ない」 昨日本屋さんでCMが流れていて、思い立って今日観に行くことにした。(4/2) かつて父親の介護に疲弊して限界を迎えた男が、父の「殺してくれ」という希…

『サカサマのパテマ』

・立場の違う人々の異文化交流 前に「バブル」を観た時に、異文化交流系はどちらか片方の世界しか描かれないんだなあと思って、オトちゃんが主人公の都合のいいように理解されただけのような気がして不満が残ったのを思い出した。偶然だけどバブルも重力の話…

もっかい『ピカソ展』そして『ミステリアス・ピカソ』

ピカソ展に行ってきました。(2回目) そして『ミステリアス・ピカソ』も観た。 ピカソは最近マイブームになりつつある。 「こーゆーのがいい」という感じ。 堅苦しいことをいうと、人間の思考の自由をこういう作品が支えてくれる気がする。飛べるって思う。 …

ヘブバン『コスモスが咲き続けた場所』

『Angel Beats!』を観終わり、満を持してイベントへ。AB!観ておいてよかった〜。 ヘブバンコラボといいつつ、AB!14話のお時間だった。控えめに言って最高です。 1stアニバイベということで、今回の脚本は麻枝さんによる。真打ち登場。 前半は最終回で「も…

堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』37巻

佳境ですね…! ネタバレせずに見どころをピックアップするの会。 「シャーペンだけで描きたい…描きたい…!」 先生のフリースペース。原稿の絵もすさまじい。しかしシャーペンの線美しすぎる。 「だから僕はね」 「世界中の未来を阻みたい」 「ただ そう在り…

『Angel Beats!』

「人生を、素晴らしいものだと思い出せる何かが、ここにあります。」(新聞広告より) これは仲村ゆりの死後のお話。 生前3人の弟妹の命をたった30分で奪われた彼女が、死後も神様に抗おうとして、仲間ができて、気がついたら長い年月のうちに喪った家族と同じ…

碇雪恵『35歳からの反抗期入門』

友人の熱烈なおすすめを受けて。 ブログ記事がもとになっているエッセイ作品。ちょうど年齢的に共感できたり、それ思ったことあるなーと思ったりしながら読む。 ・「反抗期」 タイトルに冠しているように、全編通して筆者が生活の中で感じる違和感などをピッ…

『ゴッホ・アライブ』

ゴッホの特殊展示を観てきた。 ゴッホといえば塗り重ねられたまばゆい黄色の濃い油彩のイメージ。ひまわりや教科書で見たタンギー爺さんの絵などは印刷物ながらも画面の濃さに圧倒された記憶がある。 数年前にゴッホとゴーギャン展が開催されていて、確か行…

『ピカソ展』

ピカソ展を観に行った。 ピカソの絵なんて1枚も分からないんじゃないかくらいに思ってたんだけど、ミロ展で既に1枚も理解できないという経験をしていたので、望むところだった。 この世には何が描いてあるか全く理解できない絵というのが結構ある。世界は広…

女王蜂『十二次元』

さてさてさて女王蜂の待望のニューアルバムが出ました。 アヴちゃんの書く詞は、聴く人間を世界観に取り込んでしまう、吸い込まれる、食われるような、言葉で構成されていてすさまじい。 『BL』の冒頭は『ムスク ミント ヴァセリン しーっ脱がすカルヴェン』…

新海誠『秒速5センチメートル』

人の生きる速度は人それぞれで。 秒速5センチメートルで移ろう、ほとんど停まっているような恋心が、心の動きが丁寧に描かれていく作品。 中学生が一人の人を想って手紙を書いたり会いに行ったりできるのは精神年齢高いよなあと思う。 そのあと連絡を取れな…

サン=テグジュペリ『星の王子さま』(文芸社文庫)

星の王子さまミュージアムが3月に閉館するというので、来訪前の予習で再読。 初読は数年前だったはずだけど、内容はほとんど覚えていなかった。前読んだ文庫とは違う文庫で読んでいるので、翻訳が出版社によってだいぶ違うのかもしれない。 ・もやもや…から…

迷子『プリンタニア・ニッポン』3巻

お正月なので餅のような不思議生物が出てくる漫画の話を。 ・新種の生物「プリンタニア・ニッポン」 白くてもちもちとした、四つ足の生き物。 3D生体プリンタの操作に失敗すると、あらゆるエラー時に出力される。 「自動で蓋が開くまでお待ちください」とい…

山口つばさ『ブルーピリオド』13巻

ブルーピリオドを読むと、自分の頭の中とか作ってるもののこととかを別の視点から見てみたくなる。 批評されたいと思う気持ちと、人の視点ばかり気にしても作りたいものはできないぞという気持ちが共存している。 ・「罪悪感」の課題 ノーマークスでの学び、…

入江亜季『北北西に雲と往け』6巻

アイスランドから舞台はひと時日本へ。 ・車の証言を集める 祖父のジャックは鳥と話をするし、慧は車と会話できる。そんな少し不思議な能力を生かして慧は探偵業の真似事をしている。 5巻までにも度々人探しをしてきた慧だが、6巻では消えた弟の行方を追うこ…