またたび感想録

観たもの聴いたもの読んだものの感想を述べます。

とっ散らかり中につき…

今年も部署異動があった。 まさかである。 地獄のカウンター業務から脱出した先には魔王が待っていた。 「君の担当する業務は今、最悪な状況にある。」 「なんとかしないといけませんね」 「まず赤字から脱出しようぜ」 「ええ…いやあでも、他の業務もあるの…

羽海野チカ『3月のライオン』1-3巻

3月のライオンを読み始めた。 3月のライオンという物語に出てくる人々は、それぞれの持つ背景が濃い。主人公からして、史上5人目の中学生プロ棋士であり、幼くして実の両親と妹を亡くして父の友人のプロ棋士の家に引き取られたものの、家に居場所を見出せ…

大江健三郎『死者の奢り』

大江健三郎は初めて読んだ。初期の作品らしい。 数知れぬ死体が浮き沈みする医学部地下の遺体保管プールでのとある日のできごとを描いた短編。 周辺に終始翻弄されながらも物思いにふける男子学生が主人公。 開幕シチュエーションはインパクトがすごいんだけ…

笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』再読

私は前にこの話を本当に読んだのか?と思いたくなるくらい、知らない描写が現れてきて戸惑った。 再読、『タイムスリップ・コンビナート』。 この話は「私」が自宅のある都立家政駅から海芝浦駅まで行く物語なのだが、途中で降りたり乗ったり待ったりと結構…

山口つばさ『ブルーピリオド』15巻

去年買って読めてなかったのを読んだ。 ブルーピリオドという作品はつくるひとたちの物語なので、読むとこんな木端物書きにも何かしら問いかけてきたり、心を動かしてきたりする。強い作品だなあと思っている。 木端物書きが読むのを保留にしてたのは、そも…

森見登美彦『有頂天家族』

人は読むべき時に読むべき本を読むものだなあと思いながら読了した。 なぜだか読まずに10年以上本棚で肥やされていた我らが森見登美彦先生の有頂天家族は今日読まれることになっていたらしい。 『面白く生きるほかに、何もすべきことはない』 これが全てなの…

魚豊『チ。-地球の運動について-』第1集

この漫画がすごいに入っていたので、認知はしていた作品。 「地動説は当時異端で、研究者は説を捨てたりしながらも最後には認めさせました」なんてさらっと読み流していた世界史の説明が蘇る。 異端であることは死ぬことだった。命懸けで研究をして、資料を…

紺野アキラ『クジマ歌えば家ほろろ』1巻

2冊目。 「クジマ」と名乗る全長180cmのペンギンのような形をした鳥が、冬の間ロシアから日本にやってくる。同じ種族の仲間は人目を忍んで森深くに暮らし、冬にはロシアから日本にやってくるらしいが、クジマは仲間とはぐれてロシア人に育てられ、今回が初め…

林史也『煙たい話』1巻

年に1回くらい、直感で見知らぬ漫画を何冊かお持ち帰りすることがある。今日はそれだった。 これまでも至高の餅SF漫画『プリンタニア・ニッポン』やひとりたちの集う『ふきよせレジデンス』を発掘してきた当企画。自分の自分による自分のための選書。選び取…

岡本太郎『青春ピカソ』

タローがピカソに出会ったら。 岡本太郎からピカソ感じるよなあと思ってたら、岡本太郎がピカソを語った本が出てた。 語るどころか、スペインのアトリエまで行って会って話をしている。そのレポートまでもが載っている、これはもはや至高の1冊といっていい。…

『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』

3月16日に公開する映画がロケ地の江南でお披露目先行上映されるということで、当日券で観た。 監督は井上淳一氏。 名古屋駅の新幹線口を抜けた繁華街にシネマスコーレという小さな映画館があり、そこが開業した時の話。 映画監督・若松(井浦新)が、自分の映…

『東京マグニチュード8.0』(アニメ)

湯浅監督の作品だと思ってたけど、湯浅監督作品は『日本沈没2020』の方だった。その事実に気づいたのは5話目くらいだったけど、5話まで観たらもう途中で止まれるような作品ではなく、今しがた全部見終わった。 2009年にノイタミナで放送された作品。 まずオ…

ヤマシタトモコ『違国日記』(完結まで)

あーなんでしょう。なんでしょうね。 こういう… 笠町さんの衛星の概念、「与えたのと同じものが返ってこなくていい」「少し離れてその人に関わっていたい」とこれはもはや一種の悟りの境地だなと。いつかそう思えたらいいなと思う。 朝ちゃんは「なんにもな…

鴨長明『方丈記』

方丈の庵で日々は過ぐ。 『年収90万円でハッピーライフ』の著者が方丈記に絡めた書籍を出していたので、せっかくなら方丈記を読んでみるかと思い。年内に悪霊とFate/Zeroを読み切るつもりだったのに、割り込みの連続で来年に持ち越しの見通し。 鴨長明はなか…

蔡康永『私をやめたい。でも今日くらいは笑ってみる』

通信学校の先生が監訳を担当した本ということで、折角なので読んでみた。 ・自分と対峙するための「分身」をつくる ・感情に振り回されないように自分に問いかける ・どんな感情も味方にする ・生を全うするためにどう生きるか ・自分らしく生きるための「幸…

磯谷友紀『ながたんと青と』7-8巻

兄嫁・鈴音が転がり込んでから2週間が経ち、そろそろ大阪に帰らなければと話す鈴音。山口の家の空気に不安を覚える彼女の姿に、周はいち日、みちやとともに鈴音を大阪まで送ることにする。父親への桑乃木の売り上げ目標達成の報告も兼ねていた。 同じタイミ…

磯谷友紀『ながたんと青と』4-6巻

養子のみちやを迎え、大阪・山口家の父が認める成果を出すべく焼き菓子の販売や店の改装をしながら客足を伸ばしている「桑乃木」。 周の兄・縁は早く桑乃木を手に入れてしまおうと周を大阪に呼び出し、様子を見にやってきたいち日の料理に難癖をつける。その…

磯谷友紀『ながたんと青と』1-3巻

いとこのおすすめで。 太平洋戦争終戦から5年経った京都が舞台。 主人公のいち日は料亭「桑乃木」の娘で、ゆくゆくは料理人の夫とともに女将として料亭を継ぐつもりでいたものの、夫は戦争で帰らぬ人となった。 夫亡き後、自分で生計を立てるべくホテルで西…

アニメ『葬送のフリーレン』(所感)

これはいい…数年前から「この漫画がすごい」にランクインを繰り返していた作品が満を持してのアニメ化。持て囃されすぎて原作には手を出してないのでアニメが初見。テーマがシンプルで、美しい作品。 今漫画読みに刺さるのはこういう作品なんだ、と腑に落ち…

ヤマシタトモコ『違国日記』1-4巻

全てが突き刺さる今年の覇権漫画あらわる。 槙生ちゃんがほぼほぼ同世代なのだけれども、こういうこと言える大人になりたいよなあ、こういう風にありたいよなあという感じで。 「嘘がつけない」ということが槙生ちゃんの言葉の誠実さの裏付けになっている。 …

ヘブバン『シャロのナイトメアキャンペーン』

クリアしたーーーーーー!! 追いかけっこ系ゲームは不得手なので、解放感がすさまじい。 突然5体のシャロに追いかけられる1日目。 天井から逆さに走ってくるシャロに追われる2日目。 くるくる回転するシャロに追われる3日目。 巨大なシャロに食べられそうに…

杉浦さやか『ひっこしました』

各務原の古本市で買った最後の1冊を読み終えた。 イラストレーターさんのお引越しエッセイで、挿絵も写真もかわいい。読む!というより眺めて癒されちゃう本。 どんな部屋が自分の生活に合っているのか考えたり、いくつも部屋を見に行ったり、必要な大きさの…

村上春樹『1973年のピンボール』

あまりに個人的な風景が紡がれていく。 どうしたらあんなにつまらない街ができるのか、と育った街をこき下ろした今は亡き「直子」と、4年後にその街にある駅にいるという犬を見に行った「僕」。その4年間の間に「僕」は友人と翻訳業を始めて、家には双子が住…

豊田市美術館『フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築』

現代の三大建築家のひとり、フランク・ロイド・ライトの生涯を見わたす展覧会。 パネルと模型、図面と写真と、家具や再現エリア、いくつかのビデオ映像で構成されている。 「帝国ホテルのひと」くらいのイメージしかなかったのだけれども、パネルを読みなが…

最富キョウスケ『クイーンズ・クオリティ』20・21巻

母親も母親の記憶も5歳で失ったヒロインの母の過去が語られる20巻・21巻。 「絶望」を閉じ込めた開かれない扉は、わりと序盤から描かれていた。 ここ数巻でそれが「棺」だということが分かったけれど、敵に侵入させてはいけないということしか分かっていない…

かとうちあき『野宿入門』

女子高生の頃から野宿に目覚めた著者による、野宿のすすめ。 今まで生きてきて野宿をしようと思ったことはないけれど、天気のいい日の公園とかでこのままここで昼寝をしたいと思うことはある。 案外野外でも準備をすれば眠れるんだなあということが分かり、…

アニメ『アンデッドアンラック』1-3話

女王蜂の新曲につられて視聴したらおもしろい。 ヒロインは大変なロリ巨乳で、同世代の男子が主人公だったらお色気アニメと化しそうなビジュアルなんだけれども。 幸運を否定する体質、触れたら電車に轢かれ、キスをすれば隕石が直撃するという激烈さ。 さら…

ヘブバン『美人温泉物語 湯けむり千紫万紅』

温泉に来たのに、お風呂もごはんも…ない! それなのに山菜を取りに行ったり、殺人事件を解き明かしたり、ゲームをしたり…浅見教官の暴走にもめげずになんだか意外と楽しげな、百戦錬磨のセラフ部隊員たち。 二以奈が他の大島家姉妹と比べると少し能力に見劣…

谷口菜津子『ふきよせレジデンス』上・下

久しぶりにひとめぼれ方式で漫画を買った。 これは「ひとり」たちがゆるやかにつながるお話。 偶然同じアパートに住んでいる人々。 ちょっと風変わりなツルカメコンビニ。 夢に破れた過去と振られた彼女への未練でできているムーバーイーツのお兄さん。 季節…

大原扁理『年収90万円でハッピーライフ』

この本の著者は、行動力お化けだ。 働きこそしないものの、単身なんのあてもないまま上京したり世界一周したりできる特異な人だ。 だからあんまり参考にならない。 ならないけど、うらやましいなと思う。 「こういうのがいい」「こういうのはいらない」とい…