またたび感想録

観たもの聴いたもの読んだものの感想を述べます。

劇場版PSYCHO-PASS PROVIDENCE

PSYCHO-PASS10周年の記念作品ということで。

槙島と朱ちゃんが対峙したまま年を越したあの冬はもう10年前なんですね。

PSYCHO-PASS 2PSYCHO-PASS 3の間のできごとが語られる構成となっている。

 

◯なんといっても常森朱

この作品の最大の魅力かつ見どころといってもいい常森朱のキャラクター造形…どこにでもいそうな若い女の子が、特異な体質や管理社会の根幹に触れることで、唯一無二の存在に化けていく。

今作では厚生省の統括監視官として、上層部と折衝する様なども描かれる。ラストシーンは圧巻。

 

◯神としてのシビュラシステム

キリスト教の聖書からの引用が目立つ。

シビュラシステムを神に喩える演出だけれど、神と崇める人々はただ思考や責任を放棄したいだけという危うさが描かれる。

神を便利に使いたいという意図と、人間が全て放棄した先に何が待つのかという危惧がせめぎ合う。

元々神ってなんなんだろうなと考えてしまう。自分の責任とか罪を転嫁できる他者?それは随分と都合のいい…。うーん。信仰とは。

 

◯法とシステムと

システムに支配されるっていうのは現実そうで、今この文章を打ち込んでいるスマートフォンもある意味神みたいなもので、どういう仕組みで成り立っているのか全然分からないものに、いろんなことを任せて生活している。

いや思考停止するな、考えろというのが本作が絶えず訴えるテーマだなと思うけど、現実はすでに便利な神に支配されている。ディストピアはすでに始まっているのかもしれない。何が適切で何が不適切なのか、快で不快なのか、幸で不幸なのか、他人が決めるようになったらおしまいだなという気がする。

快の中に不快があり、不幸の中に幸があり、逆もまた然りのややこしすぎる人間生活をそんな簡単に合理化してもらっては困るような気がするのだけれど。

疑うこともできないまま、流されていくのが現実なんだろうなあ。それが不幸かどうかさえ、もしかしたら気づけないかもしれない。

 

脳細胞が沸き立ついい映画でした。

続編の制作を願いつつ。