またたび感想録

観たもの聴いたもの読んだものの感想を述べます。

2023-01-01から1年間の記事一覧

ヤマシタトモコ『違国日記』(完結まで)

あーなんでしょう。なんでしょうね。 こういう… 笠町さんの衛星の概念、「与えたのと同じものが返ってこなくていい」「少し離れてその人に関わっていたい」とこれはもはや一種の悟りの境地だなと。いつかそう思えたらいいなと思う。 朝ちゃんは「なんにもな…

鴨長明『方丈記』

方丈の庵で日々は過ぐ。 『年収90万円でハッピーライフ』の著者が方丈記に絡めた書籍を出していたので、せっかくなら方丈記を読んでみるかと思い。年内に悪霊とFate/Zeroを読み切るつもりだったのに、割り込みの連続で来年に持ち越しの見通し。 鴨長明はなか…

蔡康永『私をやめたい。でも今日くらいは笑ってみる』

通信学校の先生が監訳を担当した本ということで、折角なので読んでみた。 ・自分と対峙するための「分身」をつくる ・感情に振り回されないように自分に問いかける ・どんな感情も味方にする ・生を全うするためにどう生きるか ・自分らしく生きるための「幸…

磯谷友紀『ながたんと青と』7-8巻

兄嫁・鈴音が転がり込んでから2週間が経ち、そろそろ大阪に帰らなければと話す鈴音。山口の家の空気に不安を覚える彼女の姿に、周はいち日、みちやとともに鈴音を大阪まで送ることにする。父親への桑乃木の売り上げ目標達成の報告も兼ねていた。 同じタイミ…

磯谷友紀『ながたんと青と』4-6巻

養子のみちやを迎え、大阪・山口家の父が認める成果を出すべく焼き菓子の販売や店の改装をしながら客足を伸ばしている「桑乃木」。 周の兄・縁は早く桑乃木を手に入れてしまおうと周を大阪に呼び出し、様子を見にやってきたいち日の料理に難癖をつける。その…

磯谷友紀『ながたんと青と』1-3巻

いとこのおすすめで。 太平洋戦争終戦から5年経った京都が舞台。 主人公のいち日は料亭「桑乃木」の娘で、ゆくゆくは料理人の夫とともに女将として料亭を継ぐつもりでいたものの、夫は戦争で帰らぬ人となった。 夫亡き後、自分で生計を立てるべくホテルで西…

アニメ『葬送のフリーレン』(所感)

これはいい…数年前から「この漫画がすごい」にランクインを繰り返していた作品が満を持してのアニメ化。持て囃されすぎて原作には手を出してないのでアニメが初見。テーマがシンプルで、美しい作品。 今漫画読みに刺さるのはこういう作品なんだ、と腑に落ち…

ヤマシタトモコ『違国日記』1-4巻

全てが突き刺さる今年の覇権漫画あらわる。 槙生ちゃんがほぼほぼ同世代なのだけれども、こういうこと言える大人になりたいよなあ、こういう風にありたいよなあという感じで。 「嘘がつけない」ということが槙生ちゃんの言葉の誠実さの裏付けになっている。 …

ヘブバン『シャロのナイトメアキャンペーン』

クリアしたーーーーーー!! 追いかけっこ系ゲームは不得手なので、解放感がすさまじい。 突然5体のシャロに追いかけられる1日目。 天井から逆さに走ってくるシャロに追われる2日目。 くるくる回転するシャロに追われる3日目。 巨大なシャロに食べられそうに…

杉浦さやか『ひっこしました』

各務原の古本市で買った最後の1冊を読み終えた。 イラストレーターさんのお引越しエッセイで、挿絵も写真もかわいい。読む!というより眺めて癒されちゃう本。 どんな部屋が自分の生活に合っているのか考えたり、いくつも部屋を見に行ったり、必要な大きさの…

村上春樹『1973年のピンボール』

あまりに個人的な風景が紡がれていく。 どうしたらあんなにつまらない街ができるのか、と育った街をこき下ろした今は亡き「直子」と、4年後にその街にある駅にいるという犬を見に行った「僕」。その4年間の間に「僕」は友人と翻訳業を始めて、家には双子が住…

豊田市美術館『フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築』

現代の三大建築家のひとり、フランク・ロイド・ライトの生涯を見わたす展覧会。 パネルと模型、図面と写真と、家具や再現エリア、いくつかのビデオ映像で構成されている。 「帝国ホテルのひと」くらいのイメージしかなかったのだけれども、パネルを読みなが…

最富キョウスケ『クイーンズ・クオリティ』20・21巻

母親も母親の記憶も5歳で失ったヒロインの母の過去が語られる20巻・21巻。 「絶望」を閉じ込めた開かれない扉は、わりと序盤から描かれていた。 ここ数巻でそれが「棺」だということが分かったけれど、敵に侵入させてはいけないということしか分かっていない…

かとうちあき『野宿入門』

女子高生の頃から野宿に目覚めた著者による、野宿のすすめ。 今まで生きてきて野宿をしようと思ったことはないけれど、天気のいい日の公園とかでこのままここで昼寝をしたいと思うことはある。 案外野外でも準備をすれば眠れるんだなあということが分かり、…

アニメ『アンデッドアンラック』1-3話

女王蜂の新曲につられて視聴したらおもしろい。 ヒロインは大変なロリ巨乳で、同世代の男子が主人公だったらお色気アニメと化しそうなビジュアルなんだけれども。 幸運を否定する体質、触れたら電車に轢かれ、キスをすれば隕石が直撃するという激烈さ。 さら…

ヘブバン『美人温泉物語 湯けむり千紫万紅』

温泉に来たのに、お風呂もごはんも…ない! それなのに山菜を取りに行ったり、殺人事件を解き明かしたり、ゲームをしたり…浅見教官の暴走にもめげずになんだか意外と楽しげな、百戦錬磨のセラフ部隊員たち。 二以奈が他の大島家姉妹と比べると少し能力に見劣…

谷口菜津子『ふきよせレジデンス』上・下

久しぶりにひとめぼれ方式で漫画を買った。 これは「ひとり」たちがゆるやかにつながるお話。 偶然同じアパートに住んでいる人々。 ちょっと風変わりなツルカメコンビニ。 夢に破れた過去と振られた彼女への未練でできているムーバーイーツのお兄さん。 季節…

大原扁理『年収90万円でハッピーライフ』

この本の著者は、行動力お化けだ。 働きこそしないものの、単身なんのあてもないまま上京したり世界一周したりできる特異な人だ。 だからあんまり参考にならない。 ならないけど、うらやましいなと思う。 「こういうのがいい」「こういうのはいらない」とい…

カミュ『幸福な死』

カミュの『幸福な死』を読み終えた。 第1部は随分前に読んでいたのだけれど、第2部に取り掛かるまでに間が空いてしまった。しかも第2部を読むのにものすごく時間がかかった。 カミュは『異邦人』『ペスト』『シーシュポスの神話』と読んできて、『幸福な死』…

アニメ『鴨乃橋ロンの禁断推理』1話

名探偵という生き物が昔から好きだ。 夢水清志郎もニート探偵も火村英生も、頭はきれすぎるけれど社会生活にはあまり向いていない。 そういう現代の探偵の不器用さとかっこよさがアンバランスに同居する存在感がいい。 そして社会生活に向いていない探偵には…

UNISON SQUARE GARDEN『いけないfool logic』

ユニゾンさんの新曲。 『鴨乃橋ロンの禁断推理』のオープニングになるとのことで、原作の奇怪な本格ミステリと風変わりな探偵、助手に選ばれた刑事との関係性が脳裏に浮かぶような詞になっている。 『君の心が必要で 僕の心は執拗だ 全部をひっくり返しちゃ…

『BOOK HOTEL 神保町』

神保町といえば、古書店街。 地下鉄の駅から出た瞬間から、ぐるりと見渡せば数々の書店を見つけることができる。 そんなエリアに『BOOK HOTEL 神保町』はある。 このホテルのコンセプトは、 『「わたしの本」を見つけるホテル』だそうで。 ホテルのロビー、…

カフカ『変身』再読

カフカの『変身』をふたたび。 主人公が朝目覚めたら巨大な虫になっている、かの有名な『変身』なのだが、少ないページ数で読者に与える衝撃は絶大だと思う。 主人公グレゴール・ザムザは、家業に失敗して借金を拵えた両親と妹のために5年間外交販売員として…

ヘブバン『君はこの夏のFairy、僕はその姿を瞳の奥にRec.』

夏イベントを。 お盆を意識しているのかは分からないけど、この時期のイベントは去年も今年も喪われた過去にトリップしていく仕様になっている。 夏らしいイベントのスチールあり、野外ライブPVありの大サービス夏休み仕様でありながら、終盤も終盤で「最上…

ゴッホの特殊展示と岡本太郎のエッセイ

岡本太郎の『美の呪力』を読んでいたところ、5章の「夜の画家・ゴッホ」という文章と遭遇して、春先にゴッホアライブという企画展示を観に行ったのを思い出した。 ゴッホの絵はたぶんちゃんと観たことがなくて、教科書の「タンギー爺さん」や「ひまわり」の…

『下鴨納涼古本まつり 2023』

下鴨納涼古本まつりに出かけてみた。 森見登美彦作品にたびたび登場するあの古本まつりは、毎年お盆の数日間だけ糺の森に現れる。 緑深い夏の糺の森の木立の中に、立ち並ぶテント。 テントの下に本棚がところせましと並べられて、来場者は人ひとりやっと通れ…

『特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト』

『響け!ユーフォニアム』の新作を観てきた。 オープニングから『オーメンズオブラブ』流してきたー。うまくないと決まらない難曲をかっこよく演って開幕。1期1話のヨロヨロ演奏と同じ学校とは思えない。 新部長が初々しく、部活特有の緊張と緩和の空気感が…

『本屋のとなり 喫茶わに』

多治見のお店に行ってきた。 本屋の隣にあるカフェで、古いビルをリノベーションしたような建物。本屋と喫茶店とレンタルオフィスがあるらしい。 これは私の持論だけど、お気に入りの本とおいしいご飯が揃ったら現世に楽園を具現化できると信じているので、…

そういえばよく分からない『アゲハ蝶』の歌詞

今さっき、バラエティ番組でポルノグラフィティの『アポロ』を歌おうとしてて、そういえば『アゲハ蝶』の歌詞って綺麗だけど全然わかんないよなあと思い至る。 以下歌詞の整理。 ◯登場人物 ・アゲハ蝶=あなた=友 ・旅人=僕=詩人 ◯状況 ・生を自由に旅してい…

海芝浦(聖地)

笙野頼子の『タイムスリップコンビナート』を読んでからずっと行ってみたかった憧れの海芝浦駅についに行ってきた。 周りにビルがぎゅうぎゅう詰まっているような鶴見駅から、住宅街を抜けて、運河沿いの工場地帯が現れる。 ブレードランナーは観たことない…