またたび感想録

観たもの聴いたもの読んだものの感想を述べます。

碇雪恵『35歳からの反抗期入門』

友人の熱烈なおすすめを受けて。

ブログ記事がもとになっているエッセイ作品。ちょうど年齢的に共感できたり、それ思ったことあるなーと思ったりしながら読む。

 

・「反抗期」

タイトルに冠しているように、全編通して筆者が生活の中で感じる違和感などをピックアップしている。

フリーライターをしている筆者に「自由でいいよね」という人。

作ったお酒の値段に文句を言う人。

「幸せそうな女性を殺そうと思った」という事件の動機への動揺。

自分の世界というか価値観というか、そういうものを他人に押し付けてはいないだろうかと考えさせられる。

 

・人を傷つける人

度々語られる、人を傷つける人の話。

人を傷つける人に必要なのは、正義感からの批判や罵倒じゃなくて、ケアなのだとこれはすごく共感する。

傷ついてるから、傷つけるんだよなあ。

刃物向けられたら逃げるしかないけど、罵倒するのは違うんだよなあ。でも罵倒する人もまたどこかで傷ついていて、結局悪い人なんてどこにもいないんだと気づく。

 

・「ファンタジー

筆者自身が他人に勝手に抱いている幻想(ファンタジー)にも言及している。「こうあるべき」「こうしてくれるでしょ」「こういうものでしょ」という固定観念みたいなものと言えばいいだろうか。

先に述べた「違和感」の正体も結局は他人が自分に向けてくるファンタジーだったりして、この本は全体的にファンタジーの話をしているのだと思う。

 

自分が他人に抱いているファンタジーに気づくのは存外難しい。知らず知らずのうちに勝手に「こうあってほしい」と期待して、裏切られたら怒ったり落ち込んだりする。どこにでもある光景が、意外とファンタジーのせいだったりする。

他人は自分のファンタジーのために存在するわけではなく、自分もまた他人のファンタジーのために存在しているわけではない。

欲も癖も生き様も違う人たちがひとつの社会で一緒に暮らしていると思えば、日々が予想外の連続なのはどうしようもないことだよなあと思う。

 

さっきから30分ほどかっこいい締めのフレーズを考えているけれど、出てこないので諦める。

35歳の反抗期は、これからどう生きていこうかなあと考えていく時期なのだろう。

 

そういえば友人は、本にも出てきた『花束みたいな恋をした』をいたく気に入っていて、この映画に出てくる作品や劇団をこまめにチェックしている。

何度も勧められているけど、まだ観ていない。タイトルが綺麗すぎるんだよなあ。「花束みたいな恋」というフレーズとサブカル好きカップルという組み合わせ、観る前からファンタジーのにおいがする。お互いを見ようとしないで、なんかうまくいかなくなってふわっとお別れする…みたいな展開を勝手に想像してしまっている。ので、あえて観よう。幻想を手放しながら生きていった方が楽しそうなので。