今週もずっと聴いてた。
「一聴では分からない」とはユニゾンが自分たちの曲によく使う形容で、毎日聴いてるから今20聴目くらいなので、もう1回感想を述べてみることにする。
01.スペースシャトル・ララバイ
「ララバイ」って子守唄の意だったような気がするけど、子守唄っぽさは皆無。
スペースシャトルみたいな、あるいは仰ぎ見たスペースシャトルに捧ぐララバイなので普通のララバイではないのだろうか。
あるいは「ララバイ」ではなく「ララ/バイ」で鼻歌まじりのバイバイなのか。
スペースシャトルと「僕ら」の距離感が謎めく。「僕ら」はスペースシャトルを見送る。そして「どうしようもなく息がしたくなる」。スペースシャトルはなにか憧れの例えのようなものなんだろうけど、遠くを見上げて前進を試みる詞はいつものユニゾンだなあと思う。『アンドロメダ』の「夜空の星」とか、『何かが変わりそう』の「銀河を走ってく鉄道」とか。
02.恋する惑星
この曲の僕らが星であるという概念はそういえば『弥生町ロンリープラネット』でも出てきていて、ただ詞のスケール感があまりに違う、日常ものとSFくらい違うので、気づかなかった。
『弥生町ロンリープラネット』は近距離恋愛というか、比較的近い距離で恋を願う曲だけど、『恋する惑星』はもっと遠くの人を想う、気づいてほしさを醸し出す曲となっている。
03.ミレニアムハッピー・チェンソーエッヂ
何かに怯えながら馬鹿騒ぎをする1曲。
「世紀が終わっちゃう」ことを恐れてあがいているのだろうか。でもそこはユニゾンで「確信的戦法で行こう」と鼓舞もしてくる。
でも日常自体がこんなものだよね。何か怖いものが取り巻いてるけどとりあえずその日を祝って生きていこうという心意気。
04.カオスが極まる
ユニゾンの曲群の中でもロマンチックやキラキラを削って攻めに攻めた1曲感がある。
攻めに攻めた結果、あんまり嬉しい状況じゃない時に寄り添ってくれる1曲になっている。「見たことがなけりゃないほどドラマチックだ」「抉られるくらいわけないぜ 君はどうだ」…寄り添ってはない、煽ってくれる1曲となっている。
05.City peel
これは1番も2番もAメロが秀逸。
「自転車配達員は急ぐ ブレーキの音に猫が跳ぶ
転がって汚れた毛並みの 不可思議な模様にclose upする 嘘みたいな本当の話 あれは異世界のエントランス そこまでにして視線を戻し 木漏れ日とともにぼんやりしてる」
描写がいい。お茶飲みながら猫が跳んでるとこ眺めてたい。
06.Nihil Pip Viper
「退屈持て余した皮肉屋な怪物」が「Nihil Pip Viper」さんの正体と見てるけど、この曲もたぶん3曲目と似ていて、漠然とした正体不明の何かに食われないように、でたらめを言いながら逃げ回る曲。
07.Numbness like a ginger
曲調が甘いので読み違えてたけど、歌詞は結構からい。どうにもならない地の底みたいなシチュエーションを呈示しつつ、「命がある」だけでいいんだよな、「終着点はここじゃない」と声をかけて去っていくユニゾンらしいアプローチをしている。
こういう聴き手の生命力に委ねる詞が書けるのがいいなあと思う。水をやるだけ、みたいな。聴き手も試されてる感がある。
08.もう君に会えない
これは複数いる友達の中の「彼女」や「彼」を喪って、日常の中で突然思い出したり、悔やんだり、これからにその気持ちごと連れて行こうとしていたりする気持ちの揺れ動きが描かれている。
あーでも多分、同じ立場になったらこんな風に思うだろうな、悔しいだろうな、と何回聞いても思う。亡くした人の面影は薄れていくけど、悔いだけは残り続けるような気がする。
09.アンチ・トレンディ・クラブ
うわー、この詞は難しいぞ…。
「一緒にいようぜ
できるだけ短い時間っていうエニグマ」
「エニグマ」は謎かけの意らしい。
トレンディをアンチしてるところは分かるんだけど、クラブの趣旨が難しい。20聴でも分からない。
10.kaleido proud fiesta
この曲は「自分の今を誇れるか」を問うていると思っていて、この問いかけはすごくいいものだなあと思う。自分で自分の現状を肯定できれば、そこに存在できる。納得してそこにいることができる、と思う。何を見て何をするのか、選んで決めたように在れるならそれはまあまあ誇れるんじゃないかなあ。
11.フレーズボトル・バイバイ
フレーズボトルが出てくるのがいい。
SNSとかからやってくる差出人不明の言葉たちを切って捨てて今日を生きる歌。
差出人不明の言葉を自分宛のように受け取ってしまうことはままあって、それが引っかかってしまうこともままあるなあなどと思う。
聴けば聴くほど好きになるのがユニゾンのアルバムで、聴き飽きることがない。
私はこの雑音をフレーズボトルみたいにネットの海に浮かべてしまう。言葉はあてもなく漂う。