現代の三大建築家のひとり、フランク・ロイド・ライトの生涯を見わたす展覧会。
パネルと模型、図面と写真と、家具や再現エリア、いくつかのビデオ映像で構成されている。
「帝国ホテルのひと」くらいのイメージしかなかったのだけれども、パネルを読みながら作品を流し見ていくうちに、建物から庭から調度品に至るまでを彼が設計していることがわかる。
煉瓦造りで装飾が細やかで…というイメージでいて、彼が手がけた個人宅はいずれも風景に馴染む。
とりわけ砂漠に作られた邸宅は、砂地から生まれてきたかのように土地に馴染んでいる。
落水荘の建築現場でステッキを振り回して指示を出すライトの姿をビデオ映像で目撃できる。
エネルギーにあふれた人物像が浮かぶ。
タリアセンでの映像では、若い男女が農作業や建築の習練をしていきいきと過ごす様子が収められている。その若者たちに囲まれて、ライトが語らっている。ここは自給自足の生活を営みながら、ライトが若者たちに建築を教える場だったそうだ。
ライトは日本や海外で校舎を手掛けている。
「木も花もそれぞれが本来ひとつ、ひとつのもの。こどもたちもひとつ、ひとつであるように。」との言葉を制作の際残したという。
「有機的」「完一性」とは、その土地にその土地のもので造られ、そこに住む人とともに生きていくライトが建てた建物のありかたが示す概念か。
個人の邸宅から始まり、学校やホテル、都市ビルなど華々しい建物の数々を手掛けながら、庶民が手に入れられるシンプルで美しい住宅の開発も行っていたライトは、晩年イラクやアメリカの都市構想も描いていたという。
そんな建築家の生涯の思索の歩みを感じることができる展覧会だった。