母親も母親の記憶も5歳で失ったヒロインの母の過去が語られる20巻・21巻。
「絶望」を閉じ込めた開かれない扉は、わりと序盤から描かれていた。
ここ数巻でそれが「棺」だということが分かったけれど、敵に侵入させてはいけないということしか分かっていない。
母親を死に至らしめた「絶望」…と柳の本性が描かれるのが今巻となる。柳はほんとうに救いようがないほどに非道なやつだなと思うけど、最終章でその非道さの理由まで描くのか、ただひたすら非道なやつとして終幕するのか。
電撃デイジーの時もなんか得体の知れない人がいた。ラスボスというか黒幕みたいだったのに、得体がしれないまま、何かを悟って島とともに沈んだひとが。柳もそういうかんじなのだろうか。
最富作品は日常のささやかなシーンを丁寧に描いていて、それがすごく好きだなあと思う。
家族揃って話しているシーンで栗の下処理してたり、目玉焼きが焼けるシーンに1ページ使ったり。
目玉焼きを焼いてみたくなった。
過去編は楓さんの苛烈な半生と、その間にあったささやかであまりにも幸福な日常が詰め込まれている。幸福はこのように見出すのだ。いつか壊れてしまうとしても、それに意味がなかったなんてことはないのだ、と、最後のシーンで気付かされる。