またたび感想録

観たもの聴いたもの読んだものの感想を述べます。

魚豊『チ。-地球の運動について-』第1集

この漫画がすごいに入っていたので、認知はしていた作品。

「地動説は当時異端で、研究者は説を捨てたりしながらも最後には認めさせました」なんてさらっと読み流していた世界史の説明が蘇る。

異端であることは死ぬことだった。命懸けで研究をして、資料を信頼できるものに遺して死んでいく。ただ地動説の証明を信じて託す。壮絶だ…。

 

想像力のなせる技だなあ…。

教科書など「天動説、誤り」「地動説、正しい」で終わってしまいそうなのに、天動説が信じられていた背景、宗教が絶対の空気感、異端者の扱いとその末路、なぜ自分の研究を否定しないといけなかったのか、そういうことを漫画の上でものすごいリアリティでもって再現している。

 

「感動は寿命の長さよりも大切なものだと思う」とは名言だと思うんだけど、感動のために死ねないなと共感はせずに読んだ。

でもいるんだろうな、というかいたんだよな、こういう人たちが。そして宇宙の仕組みを証したと思うとロマンあるなあと思う。

天が動いてようが地が動いていようが、私の暮らしには何の関係もないような気がするから共感はしづらいけど、この時代に生きてたら制限が多くて色んな場面でもやもやしたり腹が立ったりしそうな気はする。

胸糞悪い世間の空気の中で、地動説に殉じた彼らだけが命と引き換えに自由だったのかもしれない。何かを考えることが命懸けになるなんてしんどいし、やっぱり現代日本に生きててよかったなあと思う。

 

ガリレオ・ガリレイが没してから100年以上あとのヴォルテールの言葉(諸説あり?)として遺されているものに「私はあなたの意見には反対だ。しかしあなたがそれを発言する権利は命をかけて擁護する」というものがあって私はこれが学校で聞いた時から気に入っている。今よくよく考えたら、この時も命をかけないといけないくらい発言の権利は守りがたいものだったのかもしれないなあと思うと、さらにかっこいいなとは思う。

背景が見えると台詞や行動の切実さの理解に近づけるんだなあと気付かされる。