松本大洋先生の作品は初めて読んだ。
絵の力が強くて、ああ漫画ってこういうものなのだなあと思った。
あまり言語化するのも野暮な気がしてなかなか感想を書かずにいたけれども、言語化しておきたい気持ちもあるので無理のない範囲で言語化しておこうと思う。
漫画を愛してやまない編集者・塩澤さんが、自分の手がけた雑誌の廃刊に責任を感じて出版社を退職するところから物語ははじまる。
これまで関わってきた漫画家や同僚の編集者とのやりとりを通じて再び自分の漫画誌を刊行しようと動きはじめるまでが1巻のお話。
なのだけれども、アバンで塩澤さんの傘が飛んでいって、本編の最初のページで飼っている文鳥と塩澤さんが会話している、もうこの味わい深い間合いというか空気感は読んで堪能してもらうしかないのではなかろうか。
コマの細部が語る。
塩澤さんの文房具には全部名前シールが貼ってある。リュックを膝に抱えて電車に乗っている。お辞儀は直角だ。そうしたらページをめくるだけで塩澤さんがどんな人だか分かってくる。すごい。
ただそれぞれの日常の中で人と会って話をする。
それだけの時間に濃密な情報が詰め込まれている。
見落としてしまいそうな細部まで丁寧に丁寧に拾い上げているようなコマたちだ。
何回読んでも満たされてしまうような漫画。
汲み切れた気がしなくて、未だに2巻に取りかかれないでいる。