またたび感想録

観たもの聴いたもの読んだものの感想を述べます。

山口つばさ『ヌードモデル』

3編構成の短編集。ざわめきと確かな手触り。

 

◯ヌードモデル

・夏目

ひとりの部屋で静かに制作をする生活…彼女の生活はぶれてなくて、百瀬が取り込まれてしまったというような。なにかに夢中になってる人は見ていてかっこいいなと思う。

・百瀬の友達

八虎の友達は可愛いけど、百瀬の友達のボスみたいなのはガチで怖いな…仲直りするんだろうか。喧嘩の仕方がわりと対等だったから、あ、友達なんだーと思ったけど、怖い人だなあ。

 

◯おんなのこ

・矢田のディスり

女子の嬌声を真似た録音が男子に受けに受けた主人公・矢田が、女子を性的に評価したり貶したり勝手な噂で物を言ったりしているのが興味深かった。

自分の方が大勢を喜ばせられるのに、男だから表立って評価はされないという苛立ちだったか。

評価する側がされる側にひっくり返る展開に戦慄。

・朝比奈

好き勝手な評価と実害を被りながらも、自分とついでに矢田を救った。矢田が最後にいかに評価されようとも自分に乳はいらないとモノローグしていたけど、それを否応なく彼女は背負って生きていくのだなと。含蓄ある作品だなと思う。

 

◯神屋

毒親

医学部主席で入学したものの、血がだめでスラム街の町医者をしている田中先生。どうやら病院を経営しているらしい実家は始終田中先生に身内の情を見せることはなかった。実家との決別直後の結末が哀しい。

・恋

身内の情を受けられなかった田中先生がお金で買えるしかし紛れもない情を与えてくれるホストに狂うのもまた道理なのだなと。

・ラストの解釈

お巡りさんがヨハンの太客で、お巡りさんの立場を利用してヨハンと共犯で死体を作り出し、献血していたという…そういうことなのか…?

このお巡りさん、医師の立場でなら、と思った田中先生と同じことを考えてたんだろうなと。これがホストに狂うということか…おそろしいものを見た。

 

人から借りた漫画そっちのけで全然違うの読んでる背徳感はある。でも今日はヌードモデルの気分だったんだ。許せー。